
オープニングの選手紹介中、それぞれに意気込みを聞いた。
まずは萩原聖人。
「一生懸命やるだけです」
ギャラリーには、やはりRMUの若手選手が多い。萩原にとっては、いわばアウェイでの闘いである。
第1節が抜け番だった古久根英孝。
「自然体で勝負したい。そうすれば結果は後から自ずとついてくるもの」
その精巧な麻雀はまさに職人芸といったところか。
いつもひと言しか発しないのは阿部孝則。
「自分の麻雀を打ちきることがテーマです」
30代で彼以上の実績を持つ選手はもちろんいない。
最速最強こと多井隆晴。
「当然ですが皆強いので、結果が出せるかはわかりません。その分、内容で魅せることができ
たらいいと思ってます。RMUは凄い、また観に来たいと思われるような麻雀を打ちたいですね」
確かにこれほどの打ち手が揃うと、その結果は誰にも予測できない。
ただ各選手とも「俺が勝つ」という闘志とプライドをぶつけてくるはずだ。
適度な緊張感が漂う中、立会人藤中の合図で1回戦が始まった。
西家スタートの萩原に、開局から好機。
            ドラ
このイーシャンテンに4巡目ツモの をノータイムでツモ切る。
ドラ表示の より明らかに良い を固定し、678の三色を見た一打か。
「いや、マンズに染めてやろうという気もあった」と萩原は後に語ったが、こうして貪欲に可能性
を残しつつ、さほど効率を無視するでもないバランスが、彼の手筋を組み立てているようだ。
次巡ツモ 打 、7巡目ツモ 、9巡目でテンパイ。
            ツモ ドラ
寄せるか?待ちは絶好、リーチか?

萩原の選択は打 のダマテン。万全を期す。
この満貫に で飛び込んだのは親の多井。
「テンパイ気配を強く出していた阿部さんの現物でしょ。 が早いし、やられたね」
さて、妙手で先制の萩原はその後も快調。
前半戦の決め手となるアガリは南3局の親番だった。
南家阿部の10巡目。萩原の を「ポン」。
            ドラ
テンパイ打牌の は、萩原が待ち焦がれていた牌だった。
「ポン!」
            
途中、押し寄せるマンズに素直に従ったが がフリテンとなっていたのだ。
「6,000オール」
を引き寄せた萩原は、トータルでも1人浮きとなる6万点近いトップを獲る。
冴えないのは阿部。
常に崩れないアベレージヒッターだが、この日はアタリ牌が寄ってきてしまう。
それでもこれを握りつぶして耐えてこそ、彼の実績があると思うのだが…。
2回戦南1局1本場、北家阿部10巡目。
            ツモ ドラ
ドラ2のチャンス手だが、好調萩原からリーチを受けている。 も も危険だ。
阿部、さして気にする風もなく打 と前進すると「ロン」
            ロン
萩原に5,200の放銃となった。
これだけの手材料が揃っていての放銃を、誰も批判しないだろう。
しかしそれは、並の打ち手ならの話で、阿部は違う。

私は過去に幾度もまのあたりにしてきたのだ。
「ここから何故降りられるんだ!?」
という阿部の脅威の粘りを。
私が尋ねると彼はいつも、
「態勢に大分差があったからね…」
とボソッと答えていた。
しかしこの日は、寡黙な王者らしからぬ攻撃的な麻雀でマイナスを重ねてしまう。
「あのリーチはなかったね」
と、本人も悔やんだのは3回戦南3局。
西家阿部の下家で、萩原が果敢に仕掛けている。
          ドラ
明らかな染めだが、ここにション牌の を打って「リーチ」と阿部。
染めてる上家で無防備にリーチとは、どれだけ待ちがいいのかと阿部の手を観ると…
            
ちょっと驚愕的だ。
ダマならまだしも、本手を宣言した阿部に向かってくるのは萩原だけ。
すぐ もチーさせて終了。
   ロン       ドラ

萩原台風の中、ひとり気を吐いたのは多井である。
ラススタートも、3回戦で萩原に競り勝ちトップとし、トータルでもプラスに転じた多井。
4回戦東2局、親番で好機。
            ドラ
4巡目、西家の古久根から が打たれるもスルー。
「鳴くわけないよ。オタ風の1枚目でしょ。これ今 か 持ってきたら勝ち確定じゃない。
ツモが効いていたしね」
9巡目にドラの をポン。
鳴かせたのは「親はチートイツのイーシャンテンと読んで打った」という古久根。
「トイトイだったか、と読みを修正している時に打たれた に反応できなかった。もう歳かな。
あの8,000オールは俺の責任だね」
年齢からくる反射の衰えは誰にもある。そして選手としては隠しておきたいことではなかろうか。
それを正直に言う古久根という古豪。
そんな彼だから多くの若手が育っているし、萩原も師匠と慕っているのであろう。

かくして12巡目、多井が を静かに開いた。
南2局の親番でも3本積み、多井連勝が決定的となった9巡目。
           
ツモ ドラ
「あの勢い(態勢)でリーチを打たないのはヌルい」
と、当然の即リーチ。ここで同巡、南家萩原の手が止まる。
            ツモ
「安手だけど、態勢的にも多井君を止められるのは俺しかいないでしょ。まだトップを狙ってい
たしね。予定では多井君が一発でつかんで裏も載って満貫と。あのメクリ合いが一番ドキドキ
したし、楽しかったよ」
萩原と多井は同年で、口にはしないものの互いに意識するところもあるだろう。
自然、両者の右手には力がこもっていた。
 は山に各1枚、対して は1枚だったが…。
「ツモ!」
15巡目、声をあげたのは萩原であった。
裏は載らず700・1,300。
萩原の予定は実現せず2着に終わったが、この勝負勘こそが彼の最大の武器なのかもしれない。
終了直後のインタビューに答えた、その叱咤激励とも言えるコメントが印象深かった。
「いままでと同じことをしていたんじゃ、また同じことの繰り返し。常に新しいことを探しながら、
自分は打っている。RMUのプロにもそういう意識をもって欲しい」
存分に魅せた萩原、多井。
脇役に回りながらも精度の高い読みを入れ最少失点におさえた古久根。
このままでは終われない阿部。
いずれにしても次節以降、想像を超えたレベルの闘いが展開されることは間違いないだろう。
是非その目で確かめていただきたい。
(室生述成・文中敬称略) 第3節の予告はこちら
【RMUエキシビションマッチ第2節終了時成績】
選手名 |
Total |
前節まで |
1回戦 |
2回戦 |
3回戦 |
4回戦 |
5回戦 |
| 萩原 聖人 |
112.2 |
32.8 |
44.4 |
▲ 10.1 |
14.0 |
3.1 |
28.0 |
| 多井 隆晴 |
32.9 |
10.9 |
▲ 29.6 |
0.9 |
38.0 |
37.4 |
▲ 24.7 |
| 古久根 英孝 |
▲ 26.2 |
- |
▲ 1.9 |
31.9 |
▲ 36.8 |
▲ 28.1 |
8.7 |
| 土田 浩翔 |
▲ 31.4 |
▲ 31.4 |
- |
- |
- |
- |
- |
| 阿部 孝則 |
▲ 89.5 |
▲ 12.3 |
▲ 12.9 |
▲ 22.7 |
▲ 15.2 |
▲ 13.4 |
▲ 13.0 |
|